スポンサーサイト

--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

文月学園オッサン二人の小さく重大な奮闘記 後編

2011年04月05日 21:57

さあ、この後編は何か月ぶりなんだろう(殴

いや、あのね、前編書いた時にはもうオチはこれにしようと思ってたからオチは決まってたの。
でもね、ほら、受験とか東方とかあやれいむとかやってたらこっちを書いてなくて……。

それにしても……前編読みたくねえ……!w
リンク貼ろうと思ってチラっと見たんですがこれ酷すぎるw
「……」多すぎでしょ! 読み辛い! ついでに使い方間違ってる!
ふざけんな昔の僕があああああああああああああああああ!!!!!
他にもだ! なんだこれは! 読む気なくす文章書きやがって!
でもこれに気づけたのは某ss作家さんのおかげなのです。某飴の方ありがとうございますっ
あ、ここまで酷くは言われてませんからねw 念のため。とっても優しい方ですよ!

そんなわけで書き直したいけど、そうするとだいたい全部もう一度書くようなものなので、それに時間使うなら新しいやつを書きたいんですよねー;;
というわけでまあ今回の後編は原作読んでれば別に前編読まなくてもわかっちゃうので、ちょいとあらすじ置いとけば前編は読まなくても読めるよ!
あれ、じゃあ前編の存在意義は
あんなのでも読んでやるぜ! って方は是非お願いします!


文月学園オッサン二人の小さく重大な奮闘記 前編


ああ、あとコメントのお返事は次にまとめてさせていただきますねっ
いくらかコメントいただいているのにお返事できてなくてすみません;;

さて、今回はなかなか自分好みにまとめることができたかと思います。
高校時代、厳しかった体育教師にたくさん面倒を見てもらったことを思い出して書きました。
勝負して全然歯が立たなかったのもいい思い出です。それでもたくさん相手をしてもらいました。
いつかまた会いに行ってリベンジしたいです。
教師に対する評価は人それぞれです。それこそ人としての好みが出るところもあるかと思います。
厳しい教師として嫌っている生徒もいたかもしれません。でもあの歳であれだけ動いて勝負してくれたり練習に付き合ってくれたり、卒業式で号泣していた姿、餞別として歌っていたあの人の姿を僕は忘れません。

まだ学生の方、いらっしゃるかもしれませんね。
そりゃあ世の中には嫌な教師だってどこかにはいるかもしれません。
でもそう決めてしまう前に、どうかもう一度その人を見てみてください。
大切な思い出になるかもしれないチャンスを簡単に潰してしまうのはもったいないことだと思いますよ。
まあ、まだまだ若造な僕の私見ですけどね。

というわけでちょっとこのシリーズ気に入っちゃったのでまた続くかもしれませんw
その時はまたお付き合いしていただければ嬉しいです!

ちなみに。
西村先生の一人称、少々迷いましたが今回は「私」で統一させていただきました。
「俺」でもよかったんですが……うーん、と迷った結果。
どちらがいいかアンケートとってもいいですねー


さてさて、いつも通り本編は『続きを読む』からどうぞ!
ご意見ご感想などなどお気軽にどうぞ! お待ちしています。
楽しんでいただければ幸いです。
ではではー


P.S.
前編のあらすじを置いておきます。
本編に入れるとちょっと微妙な感じになっちゃうので読む方はこの後を反転させてどうぞ。



前回までのあらすじ
Fクラス担任の西村宗一は、先日の学習合宿の際に自らが昏倒した理由が、彼の生徒であるFクラス所属の姫路瑞希のお菓子によるのではないかと推測。殺人フードを量産しているのではないかと思う。
予想の範疇を出ない推測だったが、彼が調査(?)をしていくうちに、それは予想から確信へと変わっていくのだった。
その過程で彼に相談を受けた化学担当の布施教諭は、その結論に恐怖と疑問を抱きながらも真剣に向き合うことを決意する。
互いに協力することとなった西村教諭と布施教諭。そして西村教諭には何か秘訣が……!?
果たしてオッサン二人とドメスティックシェフの運命はいかに!?

「……なぜこんなに大仰な話になっているのだろうか」
「ギャップというやつではないでしょうか。いろいろな意味で」
「泣かせる話ですね」



それでは本編へどうぞ!









「お料理教室……ですか?」
 姫路は少し首をかしげた。


 例の学習合宿での覗き騒ぎにより男子生徒全員が停学になってからの授業二日目。学年トップクラスの成績をマークする姫路瑞希を相手に――普段はこんなことありえないというのに――Fクラス担任西村は困り果てていた。
 というより、困っている。もしくは困り果てている。


 先日自分自身の実体験として発覚した――一部男子生徒の間ではすでに常識だが――この生徒の超特大の問題点。

 
 料理が下手。

 
 いやいやいや。
 西村は心の中で首を振る。
 生徒のことをそんな風に悪く言うものではない。
 そうだ、料理が他の人よりも多少苦手で、ちょっと化学反応が起きて、軽い毒物が完成しているというだけの――

 ところでさっきの「実体験」が「実験体」に見えてしまったのは目が疲れているからだ。

 いやいやいや。
 西村は心の中で首を振る。ついでに今度は冷や汗を流しながら。
 いくら料理が殺人級だからと言って思春期の繊細な女の子に滅多なことを言うものではない。
 さて、どのように話を進めてみるものか。

「ああ、姫路も知ってのとおり今のところ男子生徒が一週間ほどいない」
 そういえばこの件の原因は男子生徒の覗きだったか。我ながらデリカシーが足りなかったかもしれないが。
「ええ、そうですね。明久君たちもしょうがないですよねー」
 ころころと笑う姫路。西村もほっと胸をなでおろす。
「で、それでどうしてお料理教室なのですか?」
 無邪気な顔で小首をかしげる姫路。こういうところが男子生徒にも教師陣にも受けがよい理由なのだろうと思いつつ口を開く。
「ああ、男子生徒がいるときに料理の特訓というのはあまりよくないだろう。今がチャンスだと思ってな」
「そうですかね……? むしろ完成したお料理を食べてもらえる人がいるほうがいい気もしますが」
「いやいや、どうせなら完成品を食べてもらったほうがいいだろう。食べる側のインパクトを考えてな。それに、努力する姿というのは隠してこそ、だぞ」
 インパクトについては今の時点で十分保証するとは言うまい。
「なるほど。さすが西村先生ですっ」
 こんな輝く笑顔を相手にどうしてそんな酷いことが言えよう。


 かくして、姫路瑞希特訓のための料理教室を開くことになった。




「で、どうして私がいるのでしょうか」
「ご足労いただきありがとうございます布施先生」
「ああ、いえいえ。それはいいのですが」
 男子抜きでの授業が始まって3日。水曜日。学園内の調理室を貸し切っての料理教室。
 約束の時間の少し前、男二人はがらんとした大きな部屋に立っている。

「何故私はここに呼ばれたのでしょうか」
「女子生徒の手料理が食べられるとは教師冥利に尽きるとは思いませんか?」
「……こんなこと私も言いたくないですが」
 布施先生は最近すっかり老け込んでしまった気がする。あくまでも雰囲気だが。
 だがしかし口に出すのははばかれるようだ。気持ちはとてもよくわかる。
 気持ちはとてもよくわかる。
「……何故私はここに呼ばれてしまったのでしょうか」
「……布施教諭らしくもない」
 しかしうつむいて絞り出すような声で言われるととても罪悪感をあおる。
「そのなんでしょう。化学反応とか起こった時にやはり専門家が傍にいたほうが安心ですからな」
「西村先生だってある程度わかるでしょう?」
「……まあ、わからんこともないですが念のため」
「本当ですか?」
「いや……まあ……」
「…………」
「一人は、つらい」
「西村先生らしくもない」
 二人してお通夜のような雰囲気になってしまった。そうか、こういう時にお通夜のような雰囲気という言葉は使うのだ。これからは生徒にこの言葉を教えるときには身が入りそうだ。

 どちらかと言うと死刑囚というべきかもしれない。

「失礼しますっ、遅れてしまいました!」
 がらっ、と音に振り向くと、姫路が大きな袋を両手に提げがちゃがちゃと音を立てながら調理室へ入ってきた。
 ……がちゃがちゃ?
「あれ、どうしたんですか先生方……顔色があまり良くないような」
「いや、なんでもない。それよりそれは」
 料理教室を開くにあたり、材料はこちらでもつということを昨日説明したはずなのだが。まさか説明を聞き逃すような集中力のない生徒でも、聞いたことを忘れてしまうような記憶力の悪い生徒でもない。
「ああ、これですか?」
 そう言って両手の袋をがちゃがちゃと調理台の上に乗せる。
 生徒が袋を重そうに持っているというのに手助けに体が動かなかった。どうしてしまったというんだ私の体は。
「いくらなんでも、特訓に付き合ってくれるのにこちらでも用意しないのは悪いと思いまして」
「む、それは確かに助かるが……提案を持ちかけたのはこちらだしな」
 文月学園の教師といえばそこそこの給料はもらっているが、まあ食料・調味料を持参してくれるのはありがたい。が、こちらの都合で言い出したことであるのに生徒に負担させてしまうとは。

「いえいえ、わざわざ私のために――って言っていいのかわかりませんけど――お料理教室を開いていただいたのですから、材料くらいは」
 そう言いながら袋の中からいろいろな食材・調味料を取り出す姫路。
 それにしてもがしゃんという音が気になる。
 何だろう。教師になってからどんな不良生徒にも恐怖を感じたことのない私が、今この華奢な少女に言いようもないほどの恐怖を感じている。何だこれは……何を持ってきた……!
 隣を見ると布施先生が俯いている。頬を流れる一筋の汗。
 ……どれだけ詩的表現をしてもこの異様な状況はごまかせるものではなかった。

「これとこれと」
 がさがさと袋から取り出したのは肉や野菜だった。
「あれ、普通ですね……」
「そのようですね」
 我ながら生徒になんて言いぐさなんだろうか。もちろん聞こえないように配慮してはいるが。
 そうだ、そう言えば妙な(隠しきれない)隠し味がついている以外は変な点はないのだった。ということは材料自体は安全、か……?

「あとこれと」
 次に調味料。料理酒と辛みを加える類のもの。しかし調味料などわざわざ持ってこなくてもそれら程度なら調理室にはいくらかそろっているものだが……。

「これは……」
 次に出したのは重曹と白色や褐色の瓶。
 よく見るとそのうちの一つには『水酸化ナトリウム』と――

「布施先生」
「なんでしょう」
「私が知る限り水酸化ナトリウムは劇薬にカテゴリされるのですが」
「水と反応して多量の熱を発生させたりしますね」
「危ないですね」
「危ないです」

 姫路は手に持った瓶をあたりを少し見まわし――
「こっち」

 それらを全てさっきの調味料と同じところへ置いた。

「西村先生! 彼女はどういう基準で物を置いているんですか!?」
「布施先生……」
「整理して置いているように見えて適当なんですか!?」
「油断しないでください。本気の可能性があります」
 こんな感覚はいつぶり、いやこんなことが今までに一度でもあっただろうか。だいぶ昔の話だろうな。
 この私が、この場から逃げ出したいと思うなど。

 私たちの前に無慈悲にも次々と並べられていく劇薬の数々。それらを本気で調味料として使おうとしてる可能性もある。
 しかし水酸化ナトリウムなど一介の女子高生がどうやって入手したのだろうか。
「……なあ姫路。それはどうやって手に入れたんだ?」
「それ、ですか?」
「その水酸化ナトリウムだ」
「ああ、これは」
 私たちを飛び越して。どこかの方角を指さす姫路。たしかこの方角は――
「先生に『研究に使う』と言ったら貸してくれました」
 化学室だ。
「注意するように、って厳命されましたけどねっ」
 まあ普通の教師なら厳命は普通の反応といえばそうかもしれないが、そもそも一般生徒に劇薬を貸し出すというのは何事か。注意を厳命するくらいならば、そもそも水酸化ナトリウムなどという危険なものを簡単に貸し出さないでほしかった。
 いやしかし、と姫路の姿を見る。
 頭に浮かぶ言葉は無垢。その上学力は超優秀、勤勉で人当たりもいい。絵に描いたような優等生。
 確かに、研究に使うというのも……。これが進学校である我が文月学園トップグラスの学力を有する優等生の力か……!

 隣では布施先生が尋常じゃない量の汗を流しながら立っていた。

「…………」
 化学室。
 布施先生。
 担当教科は――
「西村先生」
「なんでしょう」
「私の首は飛ぶんでしょうか」
「……まだ未遂ですからセーフです」
「良かった……西村先生が料理教室を開いてくれて本当に良かった……」
「私も、新聞の見出しに載るような事件が起きなくて本当に良かったです」
 今布施先生の頭の中にはきっと、自分が守るべき何かが鮮明に思い浮かべられているに違いない。
 小さな背中から、何かを背負っている男にしか出せない何かが漂ってきている。
「西村先生、やりましょう!」
「ええ!」
 そうして私たちの戦いは始まった!
 


 
 結果から言うと、やはり尋常ではなかった。
「え、でも先生、ここで水酸化ナトリウムを入れないと大変なことに!」
「もう大変なことになっています! 料理に塩酸をいれてはいけません!」
「じゃあ塩分はどうするんですか!」
「塩をいれてください!」
「NaClですっ」
「化学式で食材を見る癖は抜きなさい!」
 怒号と感嘆符と思い込みが錯綜するまさしくそこは戦場。
 そういえば姫路は素直なせいか思い込むと直進するタイプだった気もする。


「おい姫路、その黄リンは何に使う気だ」
「え、あのお弁当を温めるのに」
「何故だッ!?」
「あの、黄リンは空気中でも発火するって先生が補習中に言ってたじゃないですか。」 
「違う! 弁当を温めるのに火はいらない! そもそもリンは猛毒だとも教えただろう!」
 駅弁と勘違いしているのかもしれない。あれは逆に化学反応を使った温め方だからな。
 隣で布施先生が干からびそうなくらい冷や汗を流していたのが印象的だ。
「違うんです、一年生の頃はレポートが提出されていたんです、こんなはずじゃなかったんです……」
 同じ教師として同情と恐怖を禁じ得ない。
 



 結果として。
 私たちは姫路に調理をさせてはいけないという結論にたどり着いた。
 勉強は驚異的と言ってもいいほどの能力を持っているのに何故こうなってしまうのかわからないが、こと料理のこととなると途方もない勘違いというか思い違いというか浮世離れというか……ともかく私たちでは矯正不可能なほどの視野の狭さを見せてしまうのだ。
 そもそも、姫路が予想外のことをしないためには材料を制限すればいいのだが……持前の頑固さを発揮して気づいたら謎の物質を混入させているという事態が二度ほど発生した。
 こうなればもう工夫のしようもない、いうなればスポーツの根性論のような方法で説得するしかない。
 そうして考えた末に。



「おにぎり……ですか?」
「ああ、そうだ。おにぎりだ。今お前が作るべきなのはおにぎりだ」
「うーん……おにぎりですか」
 想像はしていたが、やはり不満はあるようだ。それをあまり表に出ないことを利用するのは少し気が引けてしまうのだが。
「でも、せっかくだったらおいしい料理を作りたいと、私は思うんですけれど……」
 それでもしっかりと主張してくるのは……まあ、思春期の少女のなせるわざ、ということでとどめておこうか。
 さて、ここでどう説得するかだが……どうにかなるだろうか。
「姫路、お前は勘違いをしている」
「勘違い、ですか?」
 微妙にむっとしている感じだ。うむ、ちょうどいい。
「お前はおにぎりを弁当の定番のメニューとして見ていない」
「え、でも」
「まあ聞け。おにぎりというのはいいぞ。ただ握るだけ、ただ握るだけだがそれには個々人の個性が出る。ボリュームもある。食べやすい。定番でもある。弁当時に一番最初に手を伸ばすのはおにぎりだろう。そしてだ――」
「…………」
 姫路の目が見開かれていく。いいぞ、ここでもう一つだ。
「好きな人に想いを伝えられるのも、おにぎりだ」
「え! ちょっと先生好きな人だなんてそんな!」
 突然顔を真っ赤にして慌てだす姫路。やはり頭が良くてもそれ以前に一人の恋する少女。どうやら効果は覿面だったようだ。

「姫路、お前はドラマは観るほうか?」
「え、ドラマですか? えっと、すみません、あんまり……」
「いや、いいんだ。それよりもだな。その昔大食いを競う人々の中で不動のトップが主人公のドラマがあってだな」
「?」
 ここにきて姫路はきょとんとした顔をした。ドラマといえば恋愛ドラマ的なものを想像したのだろう。そこに大食いの話ときたらそうなるかもしれないな。
「その最終回の話だ。大食いのメニューはおにぎりだった。中身はない。ただの握り飯だ。だがしかし、それを握ったのはチャレンジャーのパートナーだった」
「…………」
 姫路はすっかり聞き入っているようだ。さすが学年トップの集中力といえる。
 隣で布施先生はなつかしそうに頷いている。ああ、やはり先生も観ておられましたか。あれはいいドラマだった……。

「主人公は『何も入ってないのか』と驚く。しかしだ。チャレンジャーにはわかったんだ。誰が料理を作っているのかわからない状況の中で、しかしチャレンジャーにはその握り飯を誰が作ったのかがはっきりわかった」
 あともう一息だ。
「結果から言うとチャレンジャーは負けた。チャンピオンはやはり不動のチャンピオンだった。しかし、だ。チャレンジャーはその力以上の力を発揮することができた。……それが何故かわかるか、姫路」
「……おにぎりが、力をくれたから」
 ゆっくりと噛みしめるように答えた。うむ、さすがは姫路だ。
「そうだ。おにぎりは力をくれる。たとえ中身が入っていなくても。たとえそれがただの握り飯でも。それが真心を込めて作ったものならば、それは大切な人に必ず伝わる」
「……」
 それにしても、人生何が役に立つかわからんものだ。まさか若いころに観たドラマが生徒の教育に役立つ日が来ようとはな。

「姫路」
「はい」
「人に食べ物を贈るならば――おにぎりだ」
「はいっ!」
 


 こうして私たちの料理教室は幕を閉じた。






 ここから先は後日談ということになる。


 

 今日は体育祭だ。 
 Fクラスの生徒は相変わらずいろいろ企んでいたようだが……まあ身体接触がありえる競技を召喚獣で行うことになれば悪巧みもたいしたことはできないだろう。
 まあ、何があっても私が責任を持って止める、それが教師としての責任であり信頼だろう。
 朝、念のために見回りをしていると登校してきた姫路と遭遇した。

「あ、先生おはようございます」
「ああ、おはよう……ん、その荷物はなんだ?」
 よく見ると姫路は手に大きな包みを持っていた。まあ、聞かなくても予想はつくが。
「今日みんなで食べるお弁当ですっ」
 そうして包みを少し上げて示して見せる。
「本当はいろいろおかずを作ったんですけど、ちょっと失敗してしまいまして――」
 どんな失敗をしたのかはもはや聞くまい。
「その時に思い出したんです。そういえば、お弁当にはおにぎりだって」
「そうか、よく覚えていてくれた」
「先生のおかげで今日お弁当持って来れました……本当にありがとうございますっ」
「気にするな。それも教師の役目だ」
「ふふっ、さすが西村先生です!」

 それでは私はこれで。
 そう言って姫路は校舎へと入っていった。

「ふむ……」
 今回はとてもうまくいったと言えるほうだろう。最初におかずを作って失敗したというのが若干気がかりだが……無難なところにまとまって上達がないのもよくない。きっとこれでよかったのだろう。

 こんな時に、教師は達成感を覚える。自分が生徒にアドバイスをして、それにより生徒が成功をおさめる。そんな時に教師は自分の職に誇りを覚える。

 姫路はきっと、今日の昼食の時間を笑って過ごせるだろう。そして、もしかしたらそのあとに何かがつながるかもしれない。姫路の周りの者もしかりだ。青春の一コマを、朗らかに過ごせるようになればいい。それは今しかできないのだから。

 空を見上げる。

 雲一つない晴天とはいかないが……まあ、まばらに雲がある様の方が趣があるだろう。人であっても、一色ではいられないものなのだから。

 一つ息をつく。

 対策を練っているとは言っても、あのバカどもはきっと何かをやらかすに違いない。

 ふ。
 少しだけ。ほんの少しだけだが笑みがもれる。
 それもいいだろう。それも今しかできないことなのだ。結果はどうあれそれはいつか財産になる。
 それを受け止めてやるのも、教師の役目の一つだ。

「あのバカどもはいったい何をやらかすだろうな」

 体育祭の日にも簡単なHRはある。今頃生徒たちは着替えを終え、時間をつぶしている頃だろう。
 Fクラス。自分のクラス。
 年甲斐もなく今日体育祭という日に内心はしゃいでいる自分を少し恥ずかしく思いながらも、肩を回して校舎へ向かった。


 
 余談だが。
 この日の昼食時に何が起きたのか。
 それを彼が知ることはなかったことをここに付け加えておく。




スポンサーサイト


コメント

    コメントの投稿

    (コメント編集・削除に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)

    トラックバック

    この記事のトラックバックURL
    http://youichialacarte.blog26.fc2.com/tb.php/49-142aa2ad
    この記事へのトラックバック


    最新記事


    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。